東方便り
それはとおいとおい昔の話。
この幻想卿がまだ生まれて間もない妖怪達の住処であった頃の御伽噺。
彼らの全てが人間を獲って喰うのが普通のその世界に、一人の巫女がいた。
性は博麗、名は霊夢という小さな少女。
幼少の頃より妖怪を知り、人間の身でありながら生まれもった才能で幻想卿の平和を守ったと謳われている。
古来より博麗の者は類稀なる能力で、妖怪から人間を守るといわれている伝統の家系。
幼き少女の心は親から代々受け継がれてきた仕事を果たすため、一日と欠かさず修行に励み、そして幻想卿を統一するほどの巫女へとなった。
少女の周りには不思議と仲間のような存在が集まっていった。
魔法少女、霧雨魔理沙。
紅きメイド、十六夜咲夜。
半魂半生、魂魄妖夢。
そして―――っと、これはまだ先にとっておこう。
彼女たちは誰かの危機となれば必ずその元に集い、力をあわせ邪な妖怪へと立ち向かい、そして勝利した。
今日も彼女たちの元に小さな異変が迫っている。
それは夏の終わりによく似た風のようで、けれどやっぱりそうではないような風。
けれど四人の中でなにかが起こっていると感じとったなら、それはやはり異変だ。
少女たちは行く、その異変がなんなのかを知るために。
ある者は使命で、ある者は興味本位で。
思いは別でも行く先は同じ。
そう、これは昔のお話。
笑えるようで、でもちょっと危険な世界を旅した、四人の少女と小さな子供の物語。